中国では陰暦で新年を祝います。みんな実家に帰って親戚大集合でめちゃめちゃにぎやかで楽しい時期です。もうそわそわしちゃってダメ。

にぎやかな新年
　怒涛のクリスマスパーティのあとヘナチョコ王さん（仮名・２３歳）がまたもや辞めるとか言い出して、しかも話をよく聞けば、最初っから二つの就職先を天秤にかけていて、もともとちょっとお試し、のつもりでここに来たんだなどと言うので（実はある程度そんなことだろうなと思ってはいたのですが）、私はブチキレて「そんな自分勝手な人間見たことないよ」などと５分ぐらい怒鳴りつけたのでした。またアホアホ中国人のせいで俺様の予定が狂っちまったぜ、へっ、みたいな感じです。

　でもまあとにかくこれで教師陣も固定したわけで、私は安心して年末年始の一時帰国をしたのでした。

　そして年明け。いよいよ本格的に私本来の仕事に取りかかりました。各クラスを順番に回って授業をする一方、放課後に教授法の勉強会を開いて模擬授業を相互参観させたり、一方ではときどき夕食をおごって懐柔したりもしました。いい感じ、いい感じ。やっと仕事してるって気持ちになってきました。
　しかし、常務副校長のブ～さんからもうすぐ日本へ行くという人たちを集めたクラスを作ってそれを担任してほしいと言われたのでそうしました。ま、私が教えた、という事実をアピールすることも必要ですから。

　さて、今年の旧正月は２月１２日。中国最大の休暇の季節です。うちの学校は、留学コースは２月３日から２７日までたっぷり休みなのですが、もうすぐ日本に行く研修生には中国の正月なんか知ったことか、というわけで（はないのですが(^^;）、２月９日から１８日までだけしか休みを与えないことにしました。

　そして何が起きたかと言うと、休み時間のたびに誰かしら学生が私のところに来るようになったのです。「歯が痛いので医者に行きたい」だの「父が病気で入院したので様子を見に行きたい」だの「実家の商店が書き入れ時で人が足りないから」だの「この１ヶ月間ずっと下痢が続いていたので一度検査を受けたい」だのいう理由で授業を欠席したい（そして家へ帰りたい）という願い出なのです。

　一人一人の話を聞いていると、まあそんなもんかな、とも思えるんですが、全体として考えると、これはもう絶対ただ休みたいだけ。間違いありません。６日と７日を休ませてくれとか言うので、じゃあ８日は学校に戻るのかと聞くと、「いやあ、だって９日から休みでしょう？」などと抜かすのですから。ほとんど全員その調子。これじゃあ、中国人はすぐサボろうとばかりするって言われてもしょうがないでしょう。

　でもまあ彼らの気持ちもわかるのです。これから３年間日本で一人で過ごすのですから。最後の（ってわけじゃありませんが）正月なのですから。盛大に祝いたいでしょう。うちの学校の休みが１０日しかないことの方がおかしいのです（中国では）。

　ですから私は休みをみんな許可しました。説教と引き換えに。日本じゃそんな理由で休もうとしたらクビだ、日本人だってそうなんだから研修生なんかもっと休めないもんだと思え、病気や何かは休みの間に直しておけ、以後もう病気理由の欠席は認めないからね、とか何とか。日頃優しい先生で通っている私に説教されてみんなその場ではしおらしくしているんですけど、実際うちに帰っちゃったらどうなんだか。

　冬休みの宿題をちゃんとやってくるのか、それよりもまず休み明けにちゃんと全員そろうのか、非常に心配な私なのでした。

　そして休みの前日。午前中は授業をして、午後から学生たちは帰ってもいい、ということをさんざん確認していたはずなのに、いざその日になったら誰も授業する気なんかないのです。「大掃除をしますから」とか何とか言って。ま、それならそれで仕事が減るんだから私も歓迎ですけど。

　で、その「大掃除」というのが小学生の大掃除よりもお粗末で、ただ床をちゃっちゃと掃くだけ。班長から掃除完了の報告がねえな、と思って教室を見に行くと、学生はもうすでに帰り支度を整えていて、私の顔を見るなり「よいお年を」と言いながら帰っていってしまったのでした。教務室に戻れば中国人先生たちはお茶を飲んで慰労会状態。おいおい、新学期の打ち合わせとかしておくことがあるんじゃないの？新しい学生も来るんだし、と思ってみても、校長のブ～さんは年貨（年末賞与の現物支給のようなもの(^^;）の買出しに出かけてしまっているし、校長秘書は慰労会に参加しちゃってるし。

　え、じゃあ今日はこれからどうするの？と私一人本日のスケジュールがわからないまま、昼食をとり、到着した年貨を（例によってぐずぐずな段取りで）分配し、たちまちみんな帰ってしまいました。ブ～さんも、食堂の従業員も、警備員も、運転手も。

　そして残されたのは私一人。休みには旅行に出かけることにしていましたが、休みは９日からだと聞かされていたので私が予約した切符も当然９日の分なのです。なのに８日の午後からもう休みで、しかも校内にだーれもいなくなってしまいました。帰る家がない私には年貨の分配もなかったし、まず何より夕食を一人でどうにかしなければなりません。何とさびしい年の暮れでしょうか。中国の年越しがにぎやかだなんて冗談じゃありません。

　結局近くのホテルまで行って久しぶりにスパゲティを食べて多少気分は持ち直しましたが、夜、シャワーを浴びようと思ったら、案の定、水圧が低いままでお湯が出なかったのでした。ちぇっ。