ウケる

　最も多く使われる用法は、芸人のギャグなどに対して多くの観客が笑う、という例であろう。しかし、みんなが笑うだけではなく、好評をもって迎える場合にも使えるようである。

「幼稚園児相手ならウンコネタが必ずウケる」
「Ｒ＆Ｂ全盛の潮流の中で椎名林檎がウケるのはなぜか」

　カタカナで「ウケる」と書いたが、当然これは「受ける」であって、ギャグにしても新製品にしてもこちらは発する側であり、「ウケる」のは相手のほうである。だから主語が自分になったりすることはないはずなのであるが、この言葉にも意味用法のシフトが起こっていて、自分か相手かを問わず「面白いと感じて笑う」という意味になってきている。

「○○さんに『こんにちは』って挨拶しただけなのに何かすごいウケちゃってさあ」

「××さんてば、もろ『焼きそば食べました』みたいに歯に海苔つけて挨拶してくるからウケちゃった」

　ここまでは私も許そう。別にそんな権限もないけれど、許す。しかし、押しも押されもせぬおじさんである私は次のような使い方が許せないのである。

「うん、そうそう…え？何それ、ウケるー。マジウケるー。でさぁ…」
　そういうときには「おもしろい」とか「おかしい」という形容詞があるじゃないか。気持ちを形容するなら形容詞を使いなさいよ。「ウケる」は動詞だよ。それってほとんど「おかしー」って言う代わりに「笑うー」とか言ってるのと同じじゃん。
「はい、誕生日おめでとう。ほしがってたろ、これ」
「わあ、喜ぶー」
「それで…実はこれで君とは最後にしたいんだ」
「うそー、泣くー」

うーん、バカっぽい。「喜ぶ」とか「泣く」とかいちいち言ってる暇があるなら、その喜びや悲しみを他の言葉や方法で表したらいいのに、と思う。同様に、「ウケる」とか言ってる暇があるならげらげら笑えばいいじゃないかよ、と。あまりＩＱが高そうには聞こえない。でもまあ最近の若い女の子は知的でクールなイメージで自分を売ろうなんて考えていないからこれでいいわけである。

考えてみれば今ではみんなが使っている「ムカつくぅ～」というのも「ウケるー」と同じで、おそらく今後はこの調子で何でも動詞で感情を表現するようになるのだろう。例えば、

「ここをこうするとどう？」
「いやーん、感じるぅ」

…って、もろ下ネタオチである。たまにはいいじゃないか。