それからポタラ宮のようにでかい市政府を見に行って、階段に腰掛けてしばらくぼーっとしたりした。最後は私の好みを踏まえて庶民的な店で四川料理。トイレが一つしかなくて、外の洗面台からホースが伸びてきている。手を洗った水でトイレも流すというわけだ。実に庶民的。

　というわけで大満足の一日だった。ちょっと怖そうに見えた周先生とも打ち解けたし。

　時間はあっと言う間に過ぎて、いよいよ明日威海を離れるという５月１４日。この日になってやっと昼食は軽くていいという私の主張が認められてそのへんの中華ファストフードで拉面を食った。お供は呉先生と研修生の女の子二人。気楽で楽しい昼食。呉先生があまり酒に強くないというのを聞いてわざとビールを勧めて酔わせてしまったりした。

　夕食は威海最後の夜ということで宴会。研修生の女の子も一人来ていて、中国式の美声で歌を歌ってくれたりした。またも呉先生に酒を飲ませて半分つぶしてしまった(^^;。食事の後はまたカラオケに行くか？なんて言われていたけど、ボウリングにしてもらった。

　翌５月１５日、最後の授業はまたも創作寸劇。どちらかと言うとあまりおもしろみはなかったが、みんなかなりまじめに取り組んでくれて、それはそれで胸が熱くなるのであった。２組ほどはおもしろいひねりを加えていたし。

　それから「秋山先生を送る会」みたいになって、研修生が順番に感謝の言葉とか歌とかを贈ってくれた。「短い間だったけど私たちみんな本当に秋山先生が大好きになりました。こんなに早くいなくなってしまうなんて残念です。またすぐ私たちの所へ戻ってきてください」なんて切々と言われると、でへへを通り越して泣きそうになる。最後に私からも何か挨拶したが、これからも日本語の勉強頑張って、みたいなくだらないことしか言えなかった。

　事務室に戻ると劉さんが記念品をくれた。それだけならともかく、「これはお母さんに。母の日もここで仕事だったから」なんて母親の分までくれたのには涙が出てしまった。研修生の女の子も何人か何やらくれた。モノはショボかったけど、それがかえって気持ちがこもっているようでうれしかった。

　トイレへ行ったあと手を洗っていたら研修生の女の子と出くわした。一人が「先生、また会えるよね」と言って泣き出したらもう一人も「やだもう、泣かないでよ」と言って泣き出してしまった。私も「やだもう、泣かないでよ」と言って二人を笑わせたけど、危うく泣くところだった。

　昼は派遣機関の地下食堂で研修生代表何名かを交えて食事をした。みんなに順番に乾杯をせがまれて全部応じているうちにすっかり酔っぱらってしまった。食事の後、外に連れ出されてみんなと写真を撮られまくった。こんなにモテたのは生まれて初めて、というぐらいに次から次へと女の子が隣に立っては腕を組んだりしてくるのであった。もうちょっとここにいようかなと思ってしまう。ちなみに男の研修生ともちゃんと肩を組んで撮っているので。ただ鼻の下伸ばしっぱなしだったわけではない。

　そして酔っている私としてはほとんど何が何だかわからないうちに車に乗ってみんなに手を振った。興奮してよけい酔いが回ったのか、青島への道中、急に熱くこみ上げるモノがあって、窓からゲロ吐いてしまった。高速道路だったので風にあおられてメガネが落ちた。幸い交通量が少なかったのでメガネは踏みつぶされずに済んだが、孫さんの前でこの失態、私のメンツは丸つぶれなのであった。

（続く）